『沈水したそれを、掴むことはできなかった』

20160324_e01

形はあるけれど、手で触れることのできない現象がそこに存在した時、我々はどんな感覚(時間、温度、湿度、環境、空間)を知覚し触れることができるのか。例えば、物の隙間から零れた光や、反射で写り込む光は目で見ることはできるが、手で捉えることはできない。けれども存在していることは確かで、その現象が存在した時それぞれ違う感覚を受けることがある。
それは、現われている時間や暖かさ、冷たさを感じる色の変化、大気中の水蒸気を含む量、存在するまでに関わってくる物の形状や写された時の場所、現われた場の状景などの違いが見え、様々な現れ方をしているように感じる。
そして、現象はそれらのある一定の条件が整うと生まれ、条件が満たされないと違うものへと変化してしまう、一瞬をとどめている情況であると思う。

人は一瞬の現象を認識する際そんな危うい状態をとても不安定な感覚を持ちながら現象に触れることになるのだろう。
今回は鉱物をかたどって作品化している。鉱物は基本、結晶質の固体と定義されていて、常温常圧のもとで結晶質の固体になることで定義づけられている。
その為、一定の環境条件が満たされて形を成すことができ、環境条件が少しでも異なってくると、鉱物として扱うことはなくなる。
存在定義としてとても危うい所で姿、形を保っている。その一瞬をとどめている情況に共通点があるように思え、今回の作品にとり入れられている。

制作者:新井 李奈

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